老朽おいく)” の例文
老朽おいくちてジグザグになつた板廂いたびさしからは雨水がしどろに流れ落ちる、見るとのきの端に生えて居る瓦葦しのぶぐさが雨にたゝかれて、あやまつた
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
老朽おいくちて行くその身とは反対に、年と共にかえって若く華やかになり行くその名声をば、さしもに広い大江戸は愚か三ヶさんがの隅々にまで喧伝けんでんせしめた一代の名著も
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こと今朝けさ東雲しののめたもとを振り切って別れようとすると、お名残惜なごりおしや、かような処にこうやって老朽おいくちる身の、再びお目にはかかられまい、いささ小川の水になりとも
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ老朽おいくちた年ではありませんが、半歳の病氣にむしばまれて、少しむくんだ、鉛色の顏などを見ると、卒中性のいびきを聞かなくても、人などを殺せる容體ではないことは余りにも明かです。
老和尚三七四眼蔵めんざうをゐざり出でて、此の物がたりを聞きて、そは浅ましくおぼすべし。今は老朽おいくちて三七五げんあるべくもおぼえはべらねど、君が家のわざはひもだしてやあらん。三七六まづおはせ。
老朽おいくちてジグザグになった板廂いたびさしからは雨水がしどろに流れ落ちる、見るとのきの端に生えている瓦葦しのぶぐさが雨にたたかれて、あやまった
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
対手あいて老朽おいくちたものだけで、年紀としすくない、今の学校生活でもしたものには、とても済度さいどはむずかしい、今さら、観音かんおんでもあるまいと言うようなお考えだから不可いかんのです。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
諸行しょぎょう無常は浮世のならいそれがしの身の老朽おいくち行くは、さらさら口惜くちおしいとも存じませぬが、わが国は勿論もちろん唐天竺からてんじく和蘭陀オランダにおきましても、滅多めったに二つとは見られぬ珊瑚玳瑁たいまいぎやまんのたぐい
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
恐らくこの老朽おいくちた主人のそばには、美しい内儀のお春は泊つてくれないのでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)