羅漢寺らかんじ)” の例文
彼が耶馬渓やばけいを通ったついでに、羅漢寺らかんじへ上って、日暮に一本道を急いで、杉並木の間を下りて来ると、突然一人の女とれ違った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
岩石だけでは、何んな奇峭な光景があつたにしても、何となく物足りないのは、妙義めうぎ耶馬渓やばけい羅漢寺らかんじを引いて来てもすぐわかるであらう。
あちこちの渓谷 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
操山の腹にそびゆる羅漢寺らかんじなかば樹立に抱かれて、その白壁は紫に染み、南の山の端には白雲の顔をのぞけるを見る。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
本所ほんじょの五ツ目に天恩山羅漢寺らかんじというお寺がありました。その地内じない蠑螺堂さざえどうという有名な御堂がありました。
話は、今から七十幾年前、明治九年の真夏にさかのぼります。——の席には御存じの方も無いでしょうが、その頃まで、本所の五つ目に有名な蠑螺堂さざえどうという羅漢寺らかんじがございました。
いわ佃島つくだじま深川万年橋ふかがわまんねんばし本所竪川ほんじょたてかわ、同じく本所いつ羅漢寺らかんじ千住せんじゅ、目黒、青山竜巌寺あおやまりゅうがんじ、青山穏田水車おんでんすいしゃ神田駿河台かんだするがだい日本橋橋上にほんばしきょうじょう駿河町越後屋店頭するがちょうえちごやてんとう浅草本願寺あさくさほんがんじ品川御殿山しながわごてんやま
というのは、この上小川から下小川の東寄りに、羅漢寺らかんじという寺がある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その女は臙脂べにを塗って白粉おしろいをつけて、婚礼に行く時の髪をって、裾模様すそもよう振袖ふりそでに厚い帯をめて、草履穿ぞうりばきのままたった一人すたすた羅漢寺らかんじの方へのぼって行った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)