繰拡くりひろ)” の例文
旧字:繰擴
繰拡くりひろげたペイジをじっ読入よみいつたのが、態度ようす経文きょうもんじゅするとは思へぬけれども、神々こうごうしく、なまめかしく、しか婀娜あだめいて見えたのである。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝よくちょう。画家は楽気らくげ凭掛よりかかり椅子いすに掛り、たばこみ、珈琲コオフィイを飲み、スケッチの手帳を繰拡くりひろげ、見ている。戸をたたおとす。
例の如く座敷の炬燵に絵草紙を繰拡くりひろげはしたものの、立ったり坐ったり、気も気では無い。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは分らない事だが——父の書き残したものを繰拡くりひろげて見る機会があるだろうと思う。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
翁は晶子が有島君から託されて持つて来た雑誌「白樺」を公爵夫人と一緒に繰拡くりひろげて「おお、此処ここに」と言ひながら、白樺社へ寄せられた翁の製作の写真を見て有島君の健康を問はれ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)