めぐら)” の例文
舟は深碧の水もてめぐらされたる高き岩窟いはやに近づきぬ。ジエンナロは杖をふるひて舷側の水を打てり。われは且怒り且悲みて、傍より其面を打ち目守まもりぬ。
これは二階の一室いっしつめぐらすに四目格子よつめごうしを以てしたもので、地震の日には工事既におわって、その中はなお空虚であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
町の中央まんなかの、四隣あたり不相應に嚴しく土塀をめぐらした酒造屋さかやと向ひ合つて、大きな茅葺の家に村役場の表札が出てゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その間には宮地さんに策のめぐらしようがある。先方むこうは婆一人で頑張るんだから、然う/\続かない
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いわく矢立峠古くは矢立杉と称す。杉の老木ありて柵をめぐらせり。昔田村将軍この杉の木に矢を射立て木の半身をもって奥羽の境と定む云々。『落葉集』巻十七に相州足柄あしがらに矢立の杉あり。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
目の下のみぎわなる枯蘆かれあしに、縦横に霜を置いたのが、天心の月に咲いた青い珊瑚珠さんごじゅのように見えて、その中から、瑪瑙めのうさんに似て、長く水面をはるかに渡るのは別館の長廊下で、棟に欄干をめぐらした月の色と
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町の中央なかほどの、四隣あたり不相応にいかめしく土塀をめぐらした酒造屋さかや対合むかひあつて、大きい茅葺のうちに村役場の表札が出てゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)