紫竹しちく)” の例文
こと紫竹しちくとか申した祖父は大通だいつうの一人にもなつて居りましたから、雛もわたしのではございますが、中々見事に出来て居りました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と呟いて、何十年間の道境三昧のを出て、京都紫竹しちく村のたかみねの陣屋で、初めて、大御所にえっしたのであった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹になりたや紫竹しちくだけ、元は尺八、中は笛、末はそもじの筆の軸……思いまいらせそろかしく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私はこれから内職なり何なりして亥之助が片腕にもなられるやう心がけますほどに、一生一人で置いて下さりませとわつと声たてるをかみしめる襦袢の袖、墨絵の竹も紫竹しちくの色にやいづると哀れなり。
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうして、彼は数人の兵士に守られつつ、月の光りに静まったはぎ紫苑しおんの花壇を通り、紫竹しちくの茂った玉垣の間を白洲しらすへぬけて、磯まで来ると、兵士たちの嘲笑とともにッと浜藻の上へ投げ出された。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
わたしはこれから内職ないしよくなりなんなりして亥之助いのすけ片腕かたうでにもなられるやうこゝろがけますほどに、一生いつしやう一人ひとりいてくださりませとわつとこゑたてるをかみしめる襦袢じゆばんそで墨繪すみゑたけ紫竹しちくいろにやいづるとあはれなり。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)