“篋(かたみ)” の例文
此(この)時(とき)程済は辛くも篋(かたみ)を砕き得て、篋中(きょうちゅう)の物を取出(とりいだ)す。出(い)でたる物は抑(そも)何ぞ。釈門(しゃくもん)の人ならで誰(たれ)かは要すべき、大内などには有るべくも無き度牒(どちょう)というもの三張(ちょう)ありたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
昔高帝(こうてい)升遐(しょうか)したもう時、遺篋(いきょう)あり、大難に臨まば発(あば)くべしと宣(のたま)いぬ。謹んで奉先殿(ほうせんでん)の左に収め奉れりと。羣臣(ぐんしん)口々に、疾(と)く出(いだ)すべしという。宦者(かんじゃ)忽(たちまち)にして一の紅(くれない)なる篋(かたみ)を舁(か)き来(きた)りぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
袈裟(けさ)、僧帽、鞋(くつ)、剃刀(かみそり)、一々倶(とも)に備わりて、銀十錠(じょう)添わり居(い)ぬ。篋(かたみ)の内に朱書あり、之(これ)を読むに、応文は鬼門(きもん)より出(い)で、余(よ)は水関(すいかん)御溝(ぎょこう)よりして行き、薄暮にして神楽観(しんがくかん)の西房(せいぼう)に会せよ、とあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)