節操みさを)” の例文
『断然元子もとこを追ひ出してしづを奪つて来る。いやしくつても節操みさをがなくつてもしづの方がい』といふ感が猛然と彼の頭にぼつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何事も金銭かねで始末がつけられると思つてゐる富豪かねもちにとつて、暑さは真実苦手であつた。何故といつて、お太陽様てんとさまは女のやうに金銭かね節操みさをを売らなかつたから。
兼吉さんと米ちやんとのお話を承はつてる中に、私の心が妙な風に成つて来ましてネ、仮令たとひ女性をんな節操みさをけがしたものでも、其が自分の心から出たのでないならば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
明星みやうじやう、君が節操みさをにわれあえなむ——
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
銀之助はかんがへて来るとわからなくなつた。節操みさをといふものがわからなくなつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何卒どうぞ日本の政道の上に基督キリスト御栄光おんさかえあらはして下ださる様、必ず神様への節操みさををお忘れなさるなとつしやいましたが、山木様が決して忘れないから安心せよと御挨拶ごあいさつなさいますとネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
御気象ならいづ阿母おつかさんに立ちまさつて、彼様ああして世間よのなかの花とも、教会の光とも敬はれてらつしやるに、阿父おとうさんの御様子ツたら、まア何事で御座います、臨終いまはの奥様に御誓ひなされた神様への節操みさを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
女性によせいにはなくてならぬ節操みさをといふくぎが一ぽん足りないで、その身体からだ全体に『たるみ』が出来て居る、その『たるみ』がいやしい色を成して居るのだ、それが証拠には自分の前にしづには情夫をとこが有つたらしく
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)