えん)” の例文
彼の江戸の法庭に——刑場に赴くや、新郎の新婦のえんに赴くほどにゆかざるも、猛夫の戦場に出るが如く、勇みたりしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
殊勝のえんつらなれる月卿雲客、貴嬪采女きひんさいじょ、僧徒等をして、身おののき色失い、慙汗憤涙ざんかんふんるい、身をおくところ無からしめたのも、うそでは無かったろうと思われる。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宮は詩をお作りになる思召おぼしめしで文章博士もんじょうはかせなどをしたがえておいでになるのである。夕方に船は皆岸へ寄せられて、奏楽は続いて行なわれたが、船中で詩のえんは開かれたのであった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
われは此語を聞いて、フラミニアの事を思ひ出し、喜の色は我面より消え失せたり。ポツジヨ。酒は好し。風波は我えんの爲めに歌舞す。いかなれば君うれひの色を見せ給ふぞ。われ。
ケダシ賀寿ノえんヲ設ケテ以テソノ窮ヲ救ヘト。先生曰ク、中興以後世ト疎濶そかつス。彼ノ輩名利ニ奔走ス。我ガ唾棄だきスル所。今ムシロ餓死スルモあわれミヲ儕輩せいはいハズト。晩年尤モ道徳ヲおもんズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これが生還を期せざる戦いに入る前のえんだろうかと思われるほど賑やかな朝餉あさげである。そこへまた昨夜来、高槻の北方、芥川あくたがわ方面へ偵察に行っていた加藤作内光泰、福島市松などが帰って来て
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「陌上憧々人馬間。瞥見知余定何縁。明鑑却勝褚季野。歴相始得孟万年。拏手入筵誇奇遇。満堂属目共歓然。儒侠之名旧在耳。草卒深忻遂宿攀。吾郷有客与君善。遙知思我復思君。余将一書報斯事。空函乞君附瑤篇。」拏手たしゆえんに入るの十四字
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
えんを開き 綺戸きこに当る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)