むちう)” の例文
自分をむちうち、笞ち、今日までどうなり正しい道を踏みはずさないでは来たものの、その頃は事毎に迷うことばかりで、苦しんだものじゃ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
我は嘗ていにしへの信徒の自らむちうち自らきずつけしを聞きて、其情を解せざりしに、今や自らその爲す所にならはんと欲するに至りぬ。
横着者奴おうちゃくものめ」と宮崎が叫んで立ちかかれば、「出し抜こうとしたのはおぬしじゃ」と佐渡が身構えをする。二艘の舟がかしいで、ふなばたが水をむちうった。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むちうたしむること日ごとに十杖、もって十日に及んだが、なお固くって動かなかったので、さすがの太守も呆れ果てて、終にこれを放免してしまった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
あるいは恐る、日ごろ心たけかりし父の、地下よりおどでて我をむちうつこと三百、声を励まして我が意気地いくじなきを責め、わが腑甲斐ふがいなきをこらし給わんか。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ロミオ ちがはぬが、狂人きちがひよりもつら境界きゃうがい……牢獄らうごく鎖込とぢこめられ、しょくたれ、むちうたれ、苛責かしゃくせられ……(下人の近づいたのを見て)や、機嫌きげんよう。
いかにこれを愛したとてただ従来七度むちうったところを五度に減じ得るのみでやはり笞つことを止められぬ。
宮はあだの為に病めるをむちうたるるやうにも覚ゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
幸いにその血が一つに合ったので、裁判は直ちに兄側の勝訴となって、弟はむちうって放逐するという宣告を受けた。
害を加えた物に対してこころよくない感情を惹起ひきおこすのは人の情であって、殊に未開人民は復讐の情がさかんであるから、木石をむちうって僅に余憤を洩す類のことはすくなくない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
その詩に史上の事實をめ、聞くに堪へざる平字の連用をなしたるなど、皆むちうこらすべきとがなるを。我はまことに甚しき不快を覺えき。かゝる事に逢ふごとに、我は健康をさへ害せられんとす。
即ち現行盗の犯人は、もし自由人ならば笞刑ちけいに処したち被害者に引渡してその奴隷となし(いわゆる身位喪失の刑)、奴隷ならば先ずむちうった後ちこれを死刑に処する。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)