竹筒たけづつ)” の例文
「親分さん、お濱がそんなに泣いて居るなら、皆んな申上げてしまひます。小判を隱した竹筒たけづつは、この私が盜つたに相違ございません」
菊、水仙、りんどう、コスモス、それから梅もどきに、かるかやなどが、太い竹筒たけづつにいけてある。すっかり高級な花屋さんになってしまった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで竹筒たけづつの水をつぎこんだので、虫はやっと出て来たが、そのすがたがひどくすばしこくて強そうであった。成はやっとそれを捉えて精しく見た。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
さあそれからできましたこと、できましたこと、竹筒たけづつ半鐘独楽はんしょうごまをはじめとしまして、独楽鍛冶ごまかじもたくさんできました。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鼬の町井さんはやがて紅白の梅を二枝げて帰って来た。白い方を蔵沢ぞうたくの竹のの前にして、あかい方は太い竹筒たけづつの中に投げ込んだなり、袋戸ふくろどの上に置いた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冬は釜底かまぞこぼう阿弥陀あみだにかぶり、焦茶こげちゃ毛糸の襟巻、中には樺色のあらい毛糸の手袋をして、雨天には簑笠姿みのかさすがたで、車の心棒に油を入れた竹筒たけづつをぶらさげ、空の肥桶の上に、馬鈴薯じゃがいも甘薯さつまいもの二籠三籠
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かたわら青芒あおすすき一叢ひとむら生茂おいしげり、桔梗ききょう早咲はやざきの花が二、三輪、ただ初々ういういしく咲いたのを、つぼみと一枝、三筋ばかり青芒を取添とりそえて、竹筒たけづつに挿して、のっしりとした腰つきで、井戸から撥釣瓶はねつるべでざぶりと汲上くみあ
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竹筒たけづつ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「でも、お濱は、小判の竹筒たけづつが盜まれて、三日目には親分のところへ飛込んで來たぢやありませんか、自分のお袋の仕業しわざと知つたら、あんな事をする筈はありません」
線香、花、水桶なぞ持った墓参はかまいりが続々やって来る。丸髷まるまげや紋付は東京から墓参に来たのだ。さびしい墓場にも人声ひとごえがする。線香の煙が上る。沈丁花ちんちょうげや赤椿が、竹筒たけづつされる。新しい卒塔婆そとばが立つ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ふと竹筒たけづつへ入れて、父さんの寢る三疊の置床の隅に掛けて置きました」