種子島たねがしま)” の例文
島では鹿児島県の宝島と種子島たねがしま、東京府下では八丈島はちじょうじま、日本海では佐渡島さどがしま外側の海府かいふ地方と、羽後うご飛島とびしまとに同じ語が行われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もっとも春二月より五、六月ごろまでは、九州種子島たねがしま方面から相当に入荷があるようであるが、これは質がわるいとされている。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
はッとして身をしずめた忍剣にんけんが、ふりかえってみると種子島たねがしまをもったひとりの黒具足くろぐそくが、虚空こくうをつかみながら煙のなかであおむけにそりかえっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真正面より斬りかゝる。その時、和尚の手中の火打ひうち種子島たねがしま、パチリと音せしのみにて轟薬発せず。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
煙に包まれる硫黄島いおうしまとか、鉄砲で名高い種子島たねがしまとか、恐ろしい物語の喜界きかいしまとか、耳にのみ聞いたそれらの島々を右に見、左に見て進みますと、船は奄美大島あまみおおしま名瀬なぜに立寄って
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かかる時代に於て直接必要を感ぜらるるものは、第一に精巧な武器である。あたかもよし、この時葡萄牙ポルトガル人我が種子島たねがしまに来て小銃及び火薬を伝えた(小銃の事を当時は種子ヶ島たねがしまと言ったものである)
種子島たねがしまへ着いたのは、二時頃であつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
種子島たねがしま屋久島やくしまではこれに該当する区劃をバリ(晴)といい前晴めんばり西晴にしばりなどという。バリは壱州のフレと同じ語であることは疑いあるまい。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
せせら笑っていると、ふいに、いえのなかから轟然ごうぜんたる爆音とともに、火蓋ひぶたを切った種子島たねがしまのねらいち。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その言葉の終らぬうちに和尚の血相忽然として一変し、一間ばかり飛び退しさりて、懐中ふところに手を入れしと見る間に、金象眼したる種子島たねがしま懐中ふところ鉄砲を取出し、わが胸のあたりに狙ひを付くる。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「白い船だよ。君が病気だから、ぜいたくのやうだけど、一等に変へて貰つたンだ。食事は出さないさうだから、二食分位は用意した方がいゝさうだ。たゞね、途中の種子島たねがしまには医者も多いンださうだが、屋久島は医者がゐないンだつてね……」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
島には大体に古い仕来しきたりが残るものと見えて、対馬つしまでも種子島たねがしまでも、この最初の足入れの日には、嫁はふだん着のままで来るという話が多い。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのすきに、忍剣のうしろに身ぢかくせまって、片膝かたひざおりに、種子島たねがしま銃口じゅうこうをねらいつけた者がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠く離れて鹿児島県の種子島たねがしまに、エングヮという名があるというのがもし事実ならば、何か今一つ輸入当時からの名があって、それが東北の一隅にはつたわっているのである。
と、その姿へ向って放たれた種子島たねがしまの音が、谷底からこだまを揺すり上げた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿児島県の種子島たねがしまなどでも、その少し以前に旅行をした草野教授の話では、まだ割竹の稲扱をもって数茎ずつの籾を落し、その籾をうすに入れて脱稃だつふから精白までを一続きにしていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例えば九州の南の種子島たねがしまの熊野浦、熊野権現の神石などもそれでありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)