禿筆ちびふで)” の例文
鼻紙を一枚、念入りにしわこさえて、ガラッ八の膝の下に置くと、禿筆ちびふでへたっぷり墨汁すみを含ませて、嫌がる手に持たせました。
と、眉毛に火のつくなかで自若たる泰軒、ふところをさぐって取り出したのは殺生道中血筆帳の一冊、禿筆ちびふでの先を小松数馬の斬り口へ塗って血をつけ——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
板のやうな掛蒲団をあはせの上にかぶつて禿筆ちびふでを噛みつゝ原稿紙にむかふ日に焼けてあかゞね色をしたる頬のやつれて顴骨くわんこつの高く現れた神経質らしいおな年輩としごろの男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
のつそつしながらすすびたる行燈あんどんの横手の楽落らくがきよめば山梨県士族山本勘介やまもとかんすけ大江山おおえやま退治の際一泊と禿筆ちびふであと、さては英雄殿もひとり旅の退屈に閉口してのおんわざくれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
新墓にいつかの垣に紅白の木槿もくげが咲いて、あかい小さい蜻蛉とんぼがたくさん集まって飛んでいる。卒塔婆そとばの新しいのに、和尚さんが例の禿筆ちびふでをとったのがあちこちに立っている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
鼻紙を一枚、念入りにしわを拵へて、ガラツ八の膝の下に置くと、禿筆ちびふでへたつぷり墨汁すみを含ませて、嫌がる手に持たせました。
紙袋は小間物屋の店使いの品らしく、文字はまだ乾いていないところをみると、番頭の禿筆ちびふでで、ちょいと走り書にして使いの者に持たせたのでしょう。
と言つたやうな事を、惚氣交のろけまじりに、番硬の禿筆ちびふでで根氣よく鼻紙三枚半にのたくらせたものです。
といったような事を、惚気のろけ交りに、番硯ばんすずり禿筆ちびふでで根気よく鼻紙三枚半にのたくらせたものです。
紙片は半紙を四つに切つて、それに禿筆ちびふでで書いたもの