神妙しんみょう)” の例文
ただ林太郎にとって少し困ったことは、しろ公をおともにつれてきたのに、しろ公はおともらしく神妙しんみょうにしてついてこないことでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「いや、その浪人は牢舎中も、きわめて神妙しんみょうに致しておりますが、外よりして、しきりに牢へ近づこうとする者がござります」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神妙しんみょうに、失礼ながらこの壁辰めの繩をお受けになりますか。それとも、この老爺ろうやを相手取って、ドタバタみっともねえ真似をなさるお気ですかね
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「小僧探偵の三吉だ。神妙しんみょうに、向うを向いてそのまま地底機関車を走らせるんだ。そしてあの現場へ急がせろッ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いかにもわしは中村だ。きさまも、とうとう年貢ねんぐをおさめるときがきたようだね。つまらない虚勢をはらないで、神妙しんみょうにして、最後を清くするがいい。」
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
で、彼は、神妙しんみょうに遊ぶ稽古けいこをする。そこへちょうど、友だちのレミイが現われた。おなどしの男の子で、跛足びっこをひき、しかも、しょっちゅう走ろうとばかりする。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
二三日すると帰り新参しんざんの丑之助君が、帰った時の服装なり神妙しんみょうに礼廻りをする。軒別に手拭か半紙。入営に餞別せんべつでも貰った家へは、隊名姓名を金文字で入れた盃や塗盆ぬりぼんを持参する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「野郎、神妙しんみょうにせい」
咲耶子さくやこ、咲耶子、もういかにもがいても、この八もん鉄壁てっぺきのなかからのがれることはできぬぞ、神妙しんみょうなわにかかッてしまえ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の梅幸の栄三郎のお俊が、美しい顔に涙はなくて今にも吹き出しそうにして居る。故人片市のばあさんと、故人菊之助の伝兵衛がひとり神妙しんみょうにお婆さんになり伝兵衛になって舞台をめて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「フン、手向いしようたって、させるものか。神妙しんみょうにしろ」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「櫛まきお藤ッ! 神妙しんみょうにお縄を頂戴ちょうだいいたせッ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
神妙しんみょうにしろ!」
不思議なる空間断層 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神妙しんみょうにせい」
「おしろちかくをうろついているとは、不敵なやつ。尋常にせねばなわをうつぞ、甲斐源氏かいげんじ御曹司おんぞうし縄目なわめを、はじとおもわば、神妙しんみょうにあるきたまえ——」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し彼はよく主人をはじめ一家の者になずいて、仮令余が彼をちたゝくことがあっても、彼は手足をちゞめて横になり、神妙しんみょうに頭をのべてむちを受けた。其為め余が鞭の手は自然ににぶるのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「やあ、奸賊かんぞく和田呂宋兵衛わだるそんべえ、このになってはのがれぬところ、神妙しんみょう木隠こがくれ龍太郎の縄目なわめをうけろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)