石灯籠いしどうろう)” の例文
旧字:石燈籠
野幇間のだいこの奇月宗匠は、庭の上へ蛙のように叩きのめされた上、手頃の石灯籠いしどうろうを首筋から背中に背負って、血へどを吐いて死んで居たのです。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
はりこの鳥居とりいだとか、石灯籠いしどうろうだとか、石膏せっこうでつくった銅像のようなもの、そのほか、いろいろのものが、雨ざらしになって、おいてあるのです。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから、この家の忙しい疎開振りを眺めて、「ついでに石灯籠いしどうろうも植木もみんな持って行くといい」などわらうのであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
時候はよし、四方の景色けいしょくはよし、木蔭こかげ石灯籠いしどうろうの傍などに、今の玩具を置いて其所そこに腰打ち掛けて一服やっている。
こけむした築山つきやま石灯籠いしどうろう、泉水などの広い庭、表や奥の書院から仲間ちゅうげん部屋、女中部屋にいたるまで、ありし日のおもかげをそのままにしのばせているのです。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
三坪ほどの小庭へ招魂社しょうこんしゃ石灯籠いしどうろうを移した時のごとく、ひとりで幅を利かしているが、何となく落ちつかない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして何かのきっかけから、石灯籠いしどうろうの台をかつぎっくらをしていたのだった。私は青年団にも入らなければ、また入れてもくれなかったが、ブラブラ見に行った。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
數「其のもとは斯ういう事も中々くわしい、わしはとんと知らんが、石灯籠いしどうろうは余りなく、木の灯籠が多いの」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
松に石灯籠いしどうろうの三つもある庭を、正面から斜面から、毛筆で半紙に幾枚も画かれたのでした。一枚はもらって置きましたが、いつの間にか見失いました。遠い昔のお話です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
石灯籠いしどうろうのほのかに照した中庭——、一畳敷もあろうと思う庭石の上へ、目隠しをしたままの左孝が、叩き付けられたかえるのように伸びて、見事に眼を廻していたのです。
それでは裏の畠の石灯籠いしどうろうの下に父親が、なんか埋めたに違いない。日光山御造営のことで、江島屋取潰とりつぶしのうわさのあったころだから何千両という金を埋めたかも知れないと