真諦しんたい)” の例文
日本固有芸術の中にモンタージュの真諦しんたいを発見して驚嘆すると同時に、日本の映画にはそれがないと言っているのは皮肉である。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この八方手を尽して充分の調査をすることは仏教での俗諦ぞくたいに当ります。そして最後に結婚すべきか否かの決心をすることが真諦しんたいに当ります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
聖覚法印は、吉水と叡山との小さい事件や、感情には触れないで、ただ熱心に、道の真諦しんたいを説くだけだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いて貧道座に上り、くわしく縁起の因果を弁証し、六道りくどう流転るてん輪廻転生りんねてんしょうことわりを明らめて、一念弥陀仏みだぶつ即滅無量罪障そくめつむりょうざいしょう真諦しんたいを授け、終つて一句のを連らぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
めて来なければ芸道の真諦しんたい悟入ごにゅうすることはむずかしい彼女は従来甘やかされて来た他人に求むるところはこくで自分は苦労も屈辱くつじょくも知らなかった誰も彼女の高慢こうまんの鼻を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
君の心もうちなごみ(小唄の節になりて)花の降る夕暮は、思へど思はぬ振りをして、なう、思ひやせに痩せ候ひしが……(再び我に返りたるが如く)教観けうくわん二門が何の真諦しんたい、三観十乗が何の悟道さとり
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
真諦しんたい之事、八三鳥さんちょう呼子鳥よぶこどり百千鳥ももちどり稲負鳥いなおおせ)之大事、九鳥之釈、十鳥之口伝、十一一虫、十二虫之口伝、十三三才之大事、十四秘々、十五桜歌之口伝、十六重之重附古歌之事、十七土代どだい
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
すでに前条に述べたような「人生の記録と予言」という意味での芸術としての文学の真諦しんたいに触れるものは、むしろ前者よりも後者のほうに多いということになりはしないかと思われる。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この学識を「真諦しんたい」(一定不変の真理性のこと)と言います。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
窮屈な羈絆きはんの暑さのない所には自由の涼しさもあるはずはない。一日汗水たらして働いた後にのみ浴後の涼味の真諦しんたいが味わわれ、義理人情で苦しんだ人にのみ自由の涼風が訪れるのである。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)