真箇ほんと)” の例文
旧字:眞箇
真箇ほんと。ホラ、今朝島田さんから戴いた綺麗な絵葉書ね、姉ちやんがあれを取上げて奈何どうしても返さないから、代りに此を貰つたの。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
網元の主人は非常に喜んで、出産の日を待っていたが、米の妊娠は真箇ほんとの妊娠でなくて、病名も判らない奇病であった。
妖蛸 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
真箇ほんとに何時も/\先生に許り御迷惑をかけて。』と言つて、うるみをつた大きい眼を気毒相にしばたたく。左の手にはまだ封も切らぬ手紙を持つてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
待て待て、さきはま鍛冶屋かじやばんばじゃの、海鬼ふなゆうれいじゃの、七人御崎みさきじゃの、それから皆がよく云う、弘法大師こうぼうだいし石芋いしいもじゃの云う物は、皆仮作つくりごとじゃが、真箇ほんとの神様は在るぞ
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『だから不可いけない。』と昌作は錆びた声に力を入れて、『体の大小によつて人を軽重するといふ法はない。真箇ほんとに俺は憤慨する。うちの奴等もみんな然うだ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
真箇ほんとか。真箇ならお出迎いをせんといかんが」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『新坊さん、新坊さん!』と智恵子は慌てて小供に手を添へて、『まア真箇ほんとに! うしませう!』とふるへてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
宅悦は真箇ほんとのことを云わなくてはならなかった。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『いや、中学生には中学生でせう。真箇ほんとの乞食なら、嘘にしろ何にしろこんな葉書まで寄越す筈がありません。』
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『成程。それで何かな、先生、お前様めえさまは一人でも此村に信者が出来ると、何処へも行かねえて言つたけが、真箇ほんとかな? それ聞かねえと意外とんだブマ見るだ。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
可怪をかしいなア。婆さん、役場から真箇ほんとに通知書が行つたのかい? 子供を学校に出せといふ書付が?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
真箇ほんとだぞえ。寝れば癒るだあに。』とお申婆も口を添へる。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
真箇ほんとにせえ。けえるべえが?』と、その又隣りのお申婆おさるばあへ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
又見上げ見下して、『真箇ほんとに下駄で行くのですかい?』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
真箇ほんとすか?』と東川は力を入れる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)