真田幸村さなだゆきむら)” の例文
旧字:眞田幸村
真田幸村さなだゆきむらに対しても、決して粗略には存じません。萌黄色もえぎいろの海のような、音に聞いた淀川が、大阪を真二まっぷたつに分けたように悠揚ゆっくり流れる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滅多矢鱈めったやたらに六という字のつくものを並べている内に、ふと、講談本で覚えた所の真田幸村さなだゆきむらの旗印の六連銭ろくれんせんを思い浮べた。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雑兵ぞうひょうばらの二、三百は物の数じゃねえんだから、さすが真田幸村さなだゆきむらの息がかかった連中だけあって、しゃれたまねしたものだが、ところがそれが大笑いさ。
「後藤又兵衛様や、真田幸村さなだゆきむら様や、明石掃部あかしかもん様や——また長曾我部盛親ちょうそかべもりちか様などへも、秀頼公から、そっと、生活くらしのお手当というものが、届いているのだそうな」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔、名将真田幸村さなだゆきむらは、「北斗七星に向って戦う者は敗れ、七星を背にして戦う者は勝つ」と、信じていた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
しかも真田幸村さなだゆきむらの部下で、堀江錦之丞ほりえきんのじょうと云い、幸村の子大助だいすけと同年の若武者。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
秋谷村には甘え柿と、苦虫あるを知んねえか、とわざと臆病に見せかけて、宵にげたは真田幸村さなだゆきむら、やがてもり返して盗賊どろぼうの巣を乗取のっと了簡りょうけん
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
九度山に引籠っている真田幸村さなだゆきむらへ、年ごとに、大坂城からどれほどな金銀が仕送りされているかくらいなことは——関東の家康でも調べ上げているところであろう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九度山の伝心月叟でんしんげっそうこと——真田幸村さなだゆきむらこそは油断のならぬおとこである。あれをこそ、まことの曲者くせものとはいうべきだろう。いつ風雲によって、どう変じるかも知れぬ惑星だ。深淵しんえんりゅうだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はやくも見こんでいるとおり、後年太閤たいこう阿弥陀峰頭あみだほうとうの土としてのち、孤立こりつ大坂城おおさかじょうをひとりで背負せおって、関東かんとう老獪将軍ろうかいしょうぐん大御所おおごしょきもをしばしばやした、稀世きせい大軍師だいぐんし真田幸村さなだゆきむらとは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)