白光びゃっこう)” の例文
天女にも五すいそうの悲しみはあるというが、花のこずえは、いくら散っても散っても衰えないで、大地に空に、クルクルクルクル白光びゃっこうの渦を描いてめぐる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鏡の向かうところ一道の白光びゃっこう闇を貫き、その白光のはる彼方かなた、八ヶ岳の山頂と覚しき辺りに、権六を抱えた五右衛門の姿、豆より小さく見えていたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……睡鳳ずいほうにして眼底に白光びゃっこうあるは遇変不眊ぐうへんふぼうといって万人に一人というめずらしい眼相。……天庭に清色あって、地府に敦厚とんこうの気促がある。これこそは、稀有けうの異才。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
弥陀みだ白光びゃっこうとも思って、貴女を一目と、云うのですから、逢ってさえ下されば、それこそ、あの、屋中うちじゅう真黒まっくろに下ったすすも、藤の花に咲かわって、その紫の雲の中に
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
エスカレエタ式の流れに乗って、遠い屋外の白光びゃっこうから、一旦黄色光おうじきこうに変じ、黄色光から、宏壮な機関室に入って、やや本然ほんねんの木地の明りにその色は沈静して、しかして
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「産業塔」をとり囲んでいた数千の群集は、その時、探照燈の白光びゃっこうの中に、白い蜃気楼しんきろうの様に浮び上った尖塔せんとう上の、非常に印象的な、美しくも奇怪なる光景を、長い後まで忘れることが出来なかった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
日のかッと当る時は、まばゆいばかり、金剛石ダイヤモンド指環ゆびわから白光びゃっこうを射出す事さえあるじゃありませんか。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
南海霊山の岩殿寺いわとのじ、奥の御堂みどうの裏山に、一処ひとところ咲満ちて、春たけなわな白光びゃっこうに、しきかおりみなぎった紫のすみれの中に、白い山兎の飛ぶのをつつ、病中の人を念じたのを、この時まざまざと
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)