發矢はつし)” の例文
新字:発矢
ドクトルは其後そのあとにらめてゐたが、匆卒ゆきなりブローミウム加里カリびんるよりはやく、發矢はつしばか其處そこなげつける、びん微塵みぢん粉碎ふんさいしてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これは勝誇つた自分の胸に、發矢はつしと許り投げられた美しい光榮の花環であつた。女教師が初めて口を開いたのである。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ハツと身をひねると同時に、何やら平次の脇をかすめて、學寮の塀に發矢はつしと突つ立つたものがゐります。
箸箱はしばこにて發矢はつしうてば打れて驚きお金は氣にてもちがひしかと思へばキヤつと云さまに其所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無法とばせの馬車なれば(是よりして木曾の山中やまなかにも無法飛ぶのは馬車ではないかなど定めて洒落始めしならん)下手へたな言文一致のことばのやうにアツヱツ發矢はつしなど驚きて思はず叫ぶばかり山も川も只飛び過ぎ熱川にえがはより奈良井の間の諏訪峠といふ所は車の片輪を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いきなり小判を右手の拇指おやゆび食指ひとさしゆびとの間に立てて、小口をつばらすと、錢形の平次得意の投げ錢、山吹色の小判は風をきつて、五、六間先の家光の手にある茶碗の絲底いとぞこ發矢はつしと當ります。
隨分非文明な男だと思ひ乍ら行きずりに過ぎようとすると、其男の大圈おほわに振つて居る太い洋杖が、發矢はつしと許り俊吉の肩先を打つた。『何をするツ』と身構へると、其男も立止つて振返つた。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
追ひすがつた十手は、發矢はつしと女の肩を打ちました。