疑無うたがひな)” の例文
もしやと聞着けし車の音はやうやちかづきて、ますますとどろきて、つひ我門わがかどとどまりぬ。宮は疑無うたがひなしと思ひて起たんとする時、客はいとひたる声して物言へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
土地とち名所めいしよとはひながら、なか/\もつて、案内者あんないしやれて踏込ふみこむやうな遊山場ゆさんばならず。双六盤すごろくばんこと疑無うたがひなけれど、これあるは、つきなか玉兎ぎよくとのある、とおんなこと、と亭主ていしゆかたつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その場より貫一の失踪しつそうせしは、鴫沢一家しぎさわいつけの為に物化もつけ邪魔払じやまばらひたりしには疑無うたがひなかりけれど、家内かないこぞりてさすがに騒動しき。その父よりも母よりも宮は更に切なる誠をめて心痛せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)