疎漏そろう)” の例文
だが、人間の生命にかかわることだから疎漏そろうのないようにやりたまえよ。何事も辛抱しんぼう肝腎かんじんだ。根気よく目的にむかって進みたまえ
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
私の疎漏そろうなところを補い、誤謬ごびゅうのあるところを正して下さったならば、批評学が学問として未来に成立せんとは限らんだろうと思います。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
疎漏そろうは五山も同じ事なるべし、矢張馴染なじみの天民へ氣を附て謝物をするがよささうな物と申てわらひ候由、武清はなしに御座候。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
大胆な、眩惑的な、そうして飽く迄も天才的なその事業計画の中心に、ただ一点、致命的な疎漏そろうがある事を考え得なかったのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
多少の幼稚さをまじえ、疎漏そろうを加え、所々間抜けらしく見せて、しかも彼には僕の手になる手紙だ、とわかるのだ。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
どんな些細ささい疎漏そろうもあってはならない。彼は頭を火の玉の様にして、暗の中のおぼろな物を眺め廻しました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「憎いやつです。都の中納言家から、この氏真へと、遥けく贈り下された名禽めいきんを、疎漏そろうにも、餌をやるとて、鳥籠から取り逃がしてしもうたのではございませぬか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きじが祭礼の庭で鳴いたり竜が野で戦ったりするような奇怪千万で、ありもしない怪奇談であるから、みずからかえりみてさえ、根拠のない、疎漏そろうの多い、つたないものだとおもう。
神にして狂うリオ・フォルス・デ・デイオス』河攻撃の計画の疎漏そろうを、僕が指摘したので一年間延びた。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし奉公中に悪いうわさが無かったと云うのは、徳次が探索の疎漏そろうで、早く女房に死に別れたせいもありましょうが、年に似合わない道楽者で、方々の屋敷をしくじったのも皆それがためです。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは疎漏そろうといわなければならない。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「まよわないでやってみたまえ、辛抱しんぼうして疎漏そろうのないように」と、例の激励げきれいの言葉をくりかえしました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
老婆の家から程遠からぬ——町に於て拾得しゅうとくされたが、その届主が、嫌疑者の斎藤の親友である蕗屋清一郎という学生だったことを、係りの者の疎漏そろうから今日まで気附かずにいた。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、卯木うつぎが、家来どもの疎漏そろうを悔やむと、良人の服部治郎左衛門元成も
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)