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當
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とう
當時、
私の一家は長
崎に
住んでゐた。その長
崎には、下岡蓮杖
翁と
並んで、日本寫
眞界の
元祖である上野彦馬
翁が同じく
住んでゐた。
本石町の小西と
淺沼、今川小
路の
進々
堂——それらが
當時の
有名な
店だつたが、とにかく東
京にも
寫眞器屋などはまだ
數へるほどしかなかつたやうに
思ふ。
そんなことで、
到底相手にされなかつた。それに子
供だましの
寫眞器の二三円でも、
當時では、
可なりの
贅澤品に
違ひなかつたし、
然るべき
寫眞器など、
無論買つてもらへるはずもなかつた。