畢生ひつせい)” の例文
アヽ、梅子さん、何卒どうぞ我国にける、社会主義のマザアとなつて下ださい、マザアとなつて下ださい、是れが篠田長二畢生ひつせいの御願であります
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かつ見ずやいはゆる史学家なるもの多くはこれ一時代一国民もしくは一事件の歴史を以てその畢生ひつせいの事業となしたるを。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
銀行も有價證劵もなかつた時代は、打ち續く戰亂と、盜難から免れる爲には、金持長者といはれるともがらはその財産の保護と隱匿に畢生ひつせいの知識を絞つたものです。
そこで王は畢生ひつせいの記憶力を絞つて、エチオピアの料理人が榲桲マルメロを蜜の中へ入れて貯へる方法を叙述しようとした。ところが女王は、碌々聞きもしないで又急に話をかへた。
バルタザアル (新字旧仮名) / アナトール・フランス(著)
わたし畢生ひつせい幸福かうふくかげえてしまつたかのやうにむねさはがせ、いそいで引出ひきだしてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
くて婦人が無体にも予が寝しふすまをかゝげつゝ、と身を入るゝに絶叫して、護謨球ごむだまの如く飛上とびあがり、しつおもて転出まろびいでて畢生ひつせいの力をめ、艶魔えんまを封ずるかの如く、襖をおさへて立ちけるまでは
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こもりゐてうまれぬさきのおほちちの畢生ひつせいかけばすがためにみゆ
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
この一條は拙者畢生ひつせいの過ち、人手に掛つて相果てた妻に對しても、面目ない。