甲比丹かぴたん)” の例文
真ッ二つ! 孫兵衛の息と手が、さっと放たれようとした刹那せつな甲比丹かぴたんの三次やほかの者たちと、こっちの縁側にいた見返りおつな
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐皮からかはの花のあひだに止まれる鸚鵡あうむ、(横あひより甲比丹かぴたんに)うそですよ。甲比丹! あの人のは頭痛ではないのです。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さすれば鴻山こうざんも、その間に甲比丹かぴたんの三次や荷抜屋ぬきやの手下どもをさとして、阿波へ渡る秘密船を仕立てさせ、万事の手筈を調ととのえておくであろう
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古伊万里こいまりの茶碗にゑがかれたる甲比丹かぴたん、(蘭人を顧みつつ)どうしたね? 顔の色も大へん悪いやうだが——
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と、宅助がつかつか門際もんぎわへ寄ってゆくと、前後してきた甲比丹かぴたんの三次が、もうそこにいた組子の者に、腰をかがめて何かしゃべっている。すると
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしはもう今日けふ限り、あなたとも御つきあひは御免ごめんかうむりませう。古伊万里こいまり甲比丹かぴたん小柄こづか伴天連ばてれん亀山焼かめやまやき南蛮女なんばんをんな、——いえ、いえ、それどころではありません。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
啓之助が使用している机の側から、煙草盆たばこぼん煙管きせるの首で引ッかけて、その縁側に腰をすえこんでいた甲比丹かぴたんの三次。顔をみるとれッこい態度で
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、庭には点々と血汐のあと、戸障子は八方へ無残に倒れ、甲比丹かぴたんの三次と荷抜屋の手下二人は、常木鴻山がうしくくし上げてしまった様子。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、啓之助様、その甲比丹かぴたんの三次はここにおります。どうもまことにお久しぶりで」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昼中ひるなかにお月様でも見つけたような声を出したので、ひょいとそのほうを見ると、なるほど、去年の春から夏の初め頃は、甲比丹かぴたんの三次とともに、この界隈かいわいによく姿を見せた孫兵衛が
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)