生物なまもの)” の例文
「わたくしも明日は府中へ参ります所存。この頃中不漁しけで、生物なまものにもありつかず、やるせのうござれば、親分衆に取り持って貰って……」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それならば生物なまものばかりかじっているに限る。野蛮人種のように煮もせず焼きもせず、肉でも野菜でもなまで食べるのが一番無造作だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
生物なまもの、煮物、焼物の類をうつかりその辺へ置くことが出来ない、ぼんやりしてゐると直ぐ食べられてしまふので、お膳立てをするほんの僅かな間でも
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかもその詐欺インチキ盗人ぬすっとつけ景気のお蔭で、品物がドンドンさばけて行きますので、地道に行きよったら生物なまものは腐ってしまいます。世の中チウものは不思議なもんだす。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
先生が生物なまものを食べないということは有名な話ですが、これは若い時に腸を悪くされて、四、五年のあいだかゆばかりで過ごされたことが動機であって、その時の習慣と、節制
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
その杯と、生物なまものの多い新鮮な料理の箸との、合間合間に、田代さんは、杉本へ言葉をかける。
傷痕の背景 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
さりとて生物なまものをいつまでも打っちゃって置くわけにも行かないので、今度は品川から伝吉という男を呼んで来て、儲けは三人が三つ割にする約束で、夜ふけに熊の死骸を高輪の裏山へ運び出した。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「好きだからつて無闇に生物なまものを食ふな、馬鹿野郎」
生物なまもの、煮物、焼物の類をうつかりその辺へ置くことが出来ない、ぼんやりしてゐると直ぐ食べられてしまふので、お膳立てをするほんの僅かな間でも
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孫子の代まで生物なまものは売らせまいと思い思いからになった荷籠めごを担いで帰って来ます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
老紳士「毎日餌を煮て遣るのが少し面倒ですな、生物なまものはいけませんか」中川
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「いよいよもって呆れたな。口の軽い男だわい。その口前くちまえで女子をたらし、面白い目にも逢ったであろうな」「これはとんだ寃罪えんざいで、その方は不得手でございますよ。第一生物なまものは断っております」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「好きだからって無闇に生物なまものを食うな、馬鹿野郎」
生物なまもの、煮物、焼物の類をうっかりその辺へ置くことが出来ない、ぼんやりしているとぐ食べられてしまうので、お膳立てをするほんの僅かな間でも
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此店こゝぢや生物なまものは扱はないだらうな」
「第一生物なまものが食われねえ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こう云う風な生物なまものの多い、しかも田舎の割烹店かっぽうてんで作るおさだまりの会席料理などよりは、この家の台所でこしらえる新鮮な蔬菜そさいの煮付けの方が食べたかったのであるが、試みにたいの刺身にはしを着けて見ると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)