生温なまあたた)” の例文
ある生温なまあたたかい曇天の午後、ラップは得々とくとくと僕といっしょにこの大寺院へ出かけました。なるほどそれはニコライ堂の十倍もある大建築です。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
都もひな押並おしなべて黒きをる斯大なるかなしみの夜に、余等は茫然ぼうぜんと東の方を眺めて立った。生温なまあたたかい夜風がそよぐ。稲のがする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひざまずいて探って見ると、これは女らしい、長い髪を乱して土にいて、その頬からのどあたりには生温なまあたたかい血が流れていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ、おりおり、生温なまあたたかなかぜおきほうから、やみのうちをたびしてくるたびに、あねかえるのをっているおとうとかおたりました。おとうとは、もはやたえられなくなって、いていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)