玄海灘げんかいなだ)” の例文
この角鹿へ煙草たばこを売りこんだ厦門船が、一万両の売り代を積んでかえるやつを、玄海灘げんかいなだあたりで物にしようというたくらみさ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここからはまともに蒼茫たる玄海灘げんかいなだを望むことが出来る。幾つかの島を浮かべたこの荒海は、雲と船と海鳥とをあしらって絵のごとく美しい。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
下関といえば内海の果てでございます、それから玄海灘げんかいなだへ出ますと、もう波濤山の如き大海原おおうなばらなんでございますよ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下関に着いて、そこから関釜かんぷ連絡船に乗って、玄海灘げんかいなだを渡るのだが、そのときのことをちょっと……。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
わたしは日露戦役の当時、玄海灘げんかいなだでおそろしい濃霧に逢ったことを思い出しました。海の霧は山よりも深く、甲板の上で一尺さきに立っている人の顔もよく見えない程でした。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
再生の思いとはこの時の事なるべし。消毒終りて、衣類も己れの物と着換え、それより長崎行の船に乗りて名に高き玄海灘げんかいなだの波を破り、無事長崎に着きたるは十一月の下旬なり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
丁度君が玄海灘げんかいなだあたりを航海してゐる頃で、山東では済南事件が突発してゐた。僕は副社長と一所に大連から急いで帰つたのだ。留守の間に北京の季節はまつたく早く変つてしまつた。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
其時そのとき無論むろん新聞しんぶん號外がうぐわいによつて、市井しせい評判へうばんによつて、如何いかなる山間さんかん僻地へきち諸君しよくんいへどさらあたらしき、さらよろこことみゝにせらるゝであらうが、わたくしことのぞむ! 西にし玄海灘げんかいなだほとりより
玄海灘げんかいなだなつくも
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
玄海灘げんかいなだに棄てて来ることの方が多くなった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)