獄屋ひとや)” の例文
たちまちそこが開けて見ると、第二の岩戸があって、注連しめが張りめぐらしてある。その中は土の牢、岩の獄屋ひとやになっているのがありありとわかる。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
世界の人は日本人の誰某たれそれは恩人が獄屋ひとやつながれて非常な苦しみを受けて居るのを知りつつ打棄うちすてて国に帰ってしまった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
其處そこのところをそつ赤手すでつかまへて呉れる…… 暖い手で、にぎツてツても、すまアしててのひらツてゐるやつを螢籠の中へ入れる…… 恰ど獄屋ひとや抛込ほうりこまれたやうなものだが、ちつともそれには頓着しない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「先帝(後醍醐)には、六波羅別院の獄屋ひとやで、もう暗殺されている」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひろき獄屋ひとやの格子にことならず
上に名判官ある世には、獄屋ひとやのうちにも白日の照すことはあろうけれど、ここらあたりでそれを望むは、百年富士川の流れが澄むのを待つのと同じこと
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まして無残むざん獄吏等ごくりらは、それすら与へずうちはたく、この世からなる餓鬼地獄がきぢごく、絶えも入りたく思ふらん、獄屋ひとやの友を忍ぶにぞ絶えも入りたく思はるゝ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そりゃいけない。そんな事をしたならばきっとあなたは獄屋ひとやに入れられて、遂にはうえこごえとに死なねばならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)