為切しき)” の例文
旧字:爲切
鳥屋とやは別当が薄井の爺さんにことわって、縁の下を為切しきってこしらえて、入口には板切と割竹とを互違たがいちがいに打ち附けた、不細工な格子戸をめた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
この上の壁は中程を棚にて横に為切しきりあり。そこまで緑色の帛を張りあり。その上に数個の額を掛く。小さき写真の上を生花せいかにて飾りたるあり。
今夜店の植木屋などの、法外な事をいうのは、これらアラボシ商人の余風なのでしょう。一体がこういう風に、江戸の人は田舎者を馬鹿に為切しきっていた。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
屋根と表口の上とに、のきと庇とが出てゐるが、その広さが丁度家全体の広さ程ある。小さい、奥深い窓が細い格子で為切しきつてあつて、中には締め切つてあるのも見える。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
よしや富婁那ふるなの弁ありて一年三百六十日饒舌しゃべり続けに饒舌りしとて此返答は為切しきれまじ。
小説総論 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
高い壁に沿うて、分類して百にも為切しきってある棚の物が
石の門柱もんばしらに鉄格子の扉が取り附けてあって、それが締めて、脇の片扉だけがいていた。門内の左右を低い籠塀かごべい為切しきって、その奥に西洋風に戸を締めた入口がある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それからしまいには、関門で為切しきってないと
まるで聒々児くつわむしの鳴くようにやかましい女の声である。石田が声の方角を見ると、花壇の向うの畠を為切しきった、南隣の生垣の上から顔を出している四十くらいの女がいる。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
人工の物には為切しきった空間がいる。
黒塗に蒔絵まきえのしてある衣桁いこうが縦に一間を為切しきって、その一方に床が取ってある。婆あさんは柔かに、しかも反抗の出来ないように、僕を横にならせてしまった。僕は白状する。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それを這入はいると、向うにすすけたような古家の玄関が見えているが、そこまで行く間が、左右を外囲そとがこいよりずっと低いかなめ垣で為切しきった道になっていて、長方形の花崗石みかげいしが飛び飛びに敷いてある。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)