火口ひぐち)” の例文
店は熔炉ようろ火口ひぐちを開いたように明るくて、馬鹿馬鹿しくだだっ広い北海道の七間道路が向側むこうがわまではっきりと照らされていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
……たきつけを入れて、炭をいで、土瓶どびんを掛けて、茶盆を並べて、それから、扇子おおぎではたはたと焜炉の火口ひぐちあおぎはじめた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、パッパッと音を立てて、火口ひぐちから出渋でしぶる小さな焔の明滅を、やっと三つ数えたきりで、彼は眠入ねいってしまう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
そこには、真っ黒にいぶった三つの炭焼竈が、毛をむしられた巨獣のようなあらはだをして、火口ひぐちを並べていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
街燈の火口ひぐちが霧にぼやけて豆ランプのように小さく見えていた。彼女はそのときに思いだした。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
熟覧よく/\みておもへらく、これまさしく妙法寺村の火のるゐなるべしと火口ひぐちに石を入れてこれをし家にかへりて人にかたらず、雪きえてのちふたゝびその所にいたりて見るに火のもえたるはかの小溝こみぞきし也。
薪山まきやまからりだした松薪まつまきの山を崩して、それをつかむと、火口ひぐちきっと覗いた若者。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風呂の火口ひぐちかがみこんで、鼻の穴を黒くしていた次郎は
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)