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濱島
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はまじま
『なあに、
柳川君には
片附けるやうな
荷物もないのさ。』と
濱島は
聲高く
笑つて『さあ。』とすゝめた
倚子によつて、
私も
此仲間入。
濱島は
船の
舷梯まで
到つた
時、
今一
度此方を
振返つて、
夫人とその
愛兒との
顏を
打眺めたが、
何か
心にかゝる
事のあるが
如く
私に
瞳を
轉じて
妾が子ープルスの
家へ
歸つて、
涙ながらに
良人の
濱島に
再會した
時には、
弦月丸の
沈沒の
噂は
大層でした。
何事も
天命と
諦めても、
本當に
悲しう
御坐んしたよ。