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濡々
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ぬれ/\
膚が
衣を
消すばかり、
其の
浴衣の
青いのにも、
胸襟のほのめく
色はうつろはぬ、
然も
湯上りかと
思ふ
温さを
全身に
漲らして、
髮の
艶さへ
滴るばかり
濡々として、
其がそよいで
然も
其の
日は、
午前の
中、
爪皮の
高足駄、
外套、
雫の
垂る
蛇目傘、
聞くも
濡々としたありさまで、(まだ四十には
間があるのに、
壮くして
世を
辞した)
香川と
云ふ
或素封家の
婿であつた