濃尾のうび)” の例文
しかし日本では濃尾のうび震災の刺戟によって設立された震災予防調査会における諸学者の熱心な研究によって、日本に相当した耐震建築法が設定され
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
流れる筏に沿ってずっと下流に来ると、北と西から揖斐川いびがわ藪川やぶかわの水も合して、そこに水脈縦横のだだッ広い洲が見渡される。濃尾のうび両国の州界である。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三陸の海嘯つなみ濃尾のうびの地震之を称して天災といふ、天災とは人意の如何いかんともすべからざるもの、人間の行為は良心の制裁を受け、意思の主宰に従ふ、一挙一動皆責任あり
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
当時の南信から濃尾のうび地方へかけて、演劇の最も発達した中心地は、近くは飯田いいだ、遠くは名古屋であって、市川海老蔵いちかわえびぞうのような江戸の役者が飯田の舞台を踏んだこともめずらしくない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの濃尾のうび大地震おおじしんがございました年で、あれ以来この大垣おおがきもがらりと容子ようすが違ってしまいましたが、その頃町には小学校がちょうど二つございまして、一つは藩侯の御建てになったもの
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
汽車が濃尾のうび平野を横断して、伊吹山いぶきやまふもと迂廻うかいしながら、近江おうみ平野に這入っても、探偵も老翁も姿を見せない。前の男は平気でグウグウ寝ている。私はズキンズキン痛む頭を抱えてウトウトし出した。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
次に問題にしたいと思う怪異は「頽馬たいば」「提馬風たいばふう」また濃尾のうび地方で「ギバ」と称するもので、これは馬を襲ってそれを斃死へいしさせる魔物だそうである。
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
つねに出脚のはやい秀吉が、容易に立ち上がりを見せないのは、その主力を、伊勢へさし向けるか、この濃尾のうびへ東下してくるか、それが大きな懸念けねんであったところだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度の経験でも御多分ごたぶんにはれん。箔屋町はくやちょうの大火事に身代しんだいつぶした旦那は板橋の一つ半でもあおくなるかも知れない。濃尾のうびの震災にかわらの中から掘り出されたぼとけはドンが鳴っても念仏をとなえるだろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雲の海は、怒濤どとうすがたを起しはじめた。——やがて濃尾のうびの平野はその下からあきらかに見え出してくる。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついにここ濃尾のうびの大平野にも、その最初のものが、すでに昨夜からいぶり出していたのだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)