漢土もろこし)” の例文
たのむ所の深い此あて人は、庭の風景の、目立った個処個処を指摘しながら、其拠る所を、日本やまと漢土もろこしわたって説明した。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
本朝に儒教をたふとみてもは王道わうだうたすけとするは、菟道うぢきみ百済くだら七六王仁わにを召して学ばせ給ふをはじめなれば、此の兄弟はらからきみ心ぞ、やが漢土もろこしひじりの御心ともいふべし。
「ああそれではこのお方はえんノ小角であったのか。文武天皇大宝元年に、漢土もろこしへ渡ったと記されてあるが、それではその後この地へ帰り、ここで入定にゅうじょうされたものと見える」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新しい唐の制度の模倣ばかりして、漢土もろこしざえが、やまと心に入り替ったとわれて居る此人が、こんな嬉しいことを言う。家持は、感謝したい気がした。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
いにしへよりやまと漢土もろこしともに、国をあらそひて兄弟あたとなりしためしは珍しからねど、つみ深き事かなと思ふより、悪心あくしん懺悔さんげの為にとてうつしぬる御きやうなるを、いかにささふる者ありとも
漢土もろこしびとぢやとは言へ、心はまるでやまとのものと一つと思ふが、お身はうべなふかね。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
されば漢土もろこしの書は、経典けいてん七九史策しさく詩文しぶんにいたるまで渡さざるはなきに、かの孟子の書ばかりいまだ日本に来らず。八〇此の書を積みて来る船は、八一必ずしもあらき風にあひて沈没しづむよしをいへり。