洞見どうけん)” の例文
よもやこの人々が余の詩想を洞見どうけんしはしまいが、たださえ人の注視をわれ一人に集めて往来をって行くのはきまりがるいのに
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
クリストフはまだ、同人らの凡庸さを洞見どうけんしていなかった。そして彼らの方は、クリストフが仲間であるから、その天才を認めていた。
君は明らかに未来を洞見どうけんした、君のなすところは正しい。君は、フイイー、父もなく母も持たなかった、そして、仁義を母とし権利を父とした。
一見他に意味いみなきがごとくなれども、ロセツの真意しんいは政府が造船所ぞうせんじょ経営けいえいくわだてしその費用の出処しゅっしょに苦しみつつある内情を洞見どうけんし、かくして日本政府に一種の財源ざいげんあたうるときは
これに加うるに賽児が洞見どうけん預察のめいを有し、幻怪詭秘きひの術をくし、天書宝剣を得て、恵民けいみん布教の事をせるも、また真に是れ稗史の絶好資料たらずんばあらず。賽児の実蹟じっせき既にかくごとし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分を洞見どうけんして時とすると不本意ながらも自責の念を起こさせられるその眼つきに反抗して、彼女はいくら身をもがいても駄目だめだった。
自分のうちにどういうことが起こってるかを意識しなかったし、アンナのうちにどういうことが起こってるかを洞見どうけんしなかった。
オリヴィエは、その清澄な眼で人の下心をも洞見どうけんしたので、人々の凡庸さに悲しみを覚えた。しかし彼はまた、人々を奮いたせてる隠れたる力をも認めた。
これまで知らないでいたしまた知ろうとも求めなかった、彼女の感情生活を初めて洞見どうけんした。
十字軍から革命政府コンミューンにいたるまでのフランス人の勇敢な行為を瞥見べっけんしたことがあるのか。フランス精神の悲劇を洞見どうけんしたことがあるのか。パスカルの深淵しんえんをのぞき込んだことがあるか。
クリストフはみずから気づかなかった。しかしオリヴィエは耳を傾け、クリストフを打ちながめ、そして漠然ばくぜんと不安を感じた。彼は衰弱の状態のなかで、遠くまで洞見どうけんする特殊な洞察力をもっていた。