洋杯コップ)” の例文
枕元の朱塗の盆に散薬さんやくの袋と洋杯がっていて、その洋杯コップの水が半分残っているところも朝と同じであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてまた一杯飲んだ。そしてはしなくまなこを自分の方へ転じたと思うと、洋杯コップを手にしたまゝ自分の方へ大股おおまたで歩いて来る、其歩武ほぶの気力ある様は以前の様子と全然まるで違うて居た。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
スッポリと洋杯コップ全体がはまるような把手とってのついた、彫りのある銀金具の台がついているのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
時間をきめて洋杯コップになみなみといだのへレモンと砂糖を添えて持ってくるが、身体からだが要求するのだろう、さして美味おいしくもないのに、咽喉のどがひりひりして飲まずにはいられない。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
厚衾あつぶすま二組に、座敷の大抵狭められて、廊下の障子におしつけた、一閑張いっかんばりの机の上、抜いた指環ゆびわ黄金きん時計、懐中ものの袱紗ふくさも見え、体温器、洋杯コップの類、メエトルグラス、グラムを刻んだはかりなど
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして各々がきなものを取つて、皆此處彼處にかたまつて、手に食器だの洋杯コップだのを持つて立つてゐた。誰も彼も皆、大層面白さうであつた。笑ひ聲や話し聲が一ぱいになつてゐて活々いき/\としてゐた。
検察官グリインが、優しく、洋杯コップに水を注いで持たしてやり乍ら
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
取ってつけたような笑いだけがうつろに響いて、もちろん誰も酌がれた洋杯コップに手を出すものもない。伯爵ひとりで主人席に突っ立って、洋杯を挙げているばかりであった。が、その瞬間
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ロマノフ家の紋のついた皿・洋杯コップ・ナイフの類、どこでも安く売っている。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)