洋傘ようがさ)” の例文
うわさに聞く婦人の断髪こそやや下火になったが、深い窓から出て来たような少女のはかまを着け、洋書と洋傘ようがさとを携えるのも目につく。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すもものかきねのはずれから一人の洋傘ようがさ直しが荷物にもつをしょって、この月光をちりばめたみどり障壁しょうへき沿ってやって来ます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余の膝掛ひざかけ洋傘ようがさとは余が汽車から振り落されたとき居士が拾ってしまった。洋傘は拾われても雨が降らねばいらぬ。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ワーリャ (包みから洋傘ようがさを抜きだす。まるで振上げるような格好になる。ロパーヒン、ぎょっとした身振り)
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
名古屋の方から移つて來たとかで、すべての事が、今日でいふ宣傳になつて、美しい娘のゐることと、色とりどりな洋傘ようがさの卸問屋だつたのが、落著きすぎて陰氣なほどの町へ、強い刺戟しげきをあたへた。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
鼠地ねずみじに白い立縞たてじまのある背広に開襟かいきんシャツを着た、色の黒い、頭髪を綺麗きれいに分けてで着けた、何となく田舎紳士と云う感じのする、せた小柄な人物で、膝の間に洋傘ようがさを挟んでその上に両手を重ね
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
新しい事を草履ぞうり穿ようにまた洋傘ようがさをさすと同じ様にしています。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
洋傘ようがさ直しは農園のうえんの中へ入ります。しめった五月の黒つちにチュウリップは無雑作むぞうさならべてえられ、一めんにき、かすかにかすかにゆらいでいます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
洋書と洋傘ようがさとを携え、いそいそと語学の教師のもとへ通うものもあるというような、そんな人のうわさを左衛門町の家のものから聞くだけでも、彼は胸がいっぱいになった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
園丁えんていはまた唐檜とうひの中にはいり洋傘ようがさ直しは荷物にもつそこ道具どうぐのはいった引き出しをあけかんを持って水をりに行きます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
キッコのつくえはたびたびだれかにぶっつかられて暗礁あんしょうりあげた船のようにがたっとゆれました。そのたびにキッコの8の字はへん洋傘ようがさのようにかわったりしました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)