およぎ)” の例文
およぎは出来たが、川水の落口で、激浪にまれて、まさにおぼれようとした時、おおきな魚に抱かれたと思って、浅瀬へ刎出はねだされて助かった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此の時にの刀屋の番頭重三郎は川の中へほうり込まれたがおよぎを存じておりますというは、羽根田はねだで生れた人ゆえちいさい時から海の中に這入って泳ぎつけて居ります。
由比が浜のおよぎ、鎌倉山の遠足、或時は八幡様へ、或時は七里が浜へ、勉強も運動も精一杯するといった生活が、十日ばかりの間に綾子をどんなに快活にしたことでしょう。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それがずつとずつと古い代から続いて来たのである。およぎを知らない、常には川遊などをしない八十吉が、この『酢川おち』の日に、ただのひとりで川に遊びに来てゐたのである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
これを見るよりむねせまり、たいまつこゝにやけおちてつなをやきゝり、たなおちてをつと深淵ふかきふちしづみたるにうたがひなし、いかにおよぎをしり給ふとも闇夜くらきよ早瀬はやせにおちて手足てあしこゞたすかり玉ふべき便よすがはあらじ。
家は水に近いので少しはおよぎも知つて居りますが、音次郎さんと抱き合ふやうにして水へ入ると、あの船頭の傳三さんの船がすぐ鼻の先に居て、私の身體がふなばたの近くへ行くと
おっこちようもんならそれっきりです——ふちや瀬でないだけに、救助船たすけぶねともわめかれず、また叫んだところで、人は串戯じょうだんだと思って、笑って見殺しにするでしょう、およぎを知らないから
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清五郎がそいつでみよしに後ろ向になつて居る七平を突き、川の中へ落したんだらう。たゞ川の中へ突落した位ぢや、およぎのうまい七平は死なない——七平に寢返りを打たれちや菊次郎も清五郎も首が危ない