泣声なきごえ)” の例文
旧字:泣聲
アーサー少年は泣声なきごえを出したが、もう仕方がない。翼をはなれた爆弾は、見る見る小さい白点となって、碧海湾の奥の入江へ落ちて行った。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
おつや (泣声なきごえになって。)かぜを引いても、死んでも、かまわないと云うのに……。(重兵衛を突き飛ばす。)
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
立って見たら水がひざの所位しかない所まで泳いで来ていたのはそれからよほどたってのことでした。ほっと安心したと思うと、もう夢中で私は泣声なきごえを立てながら
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
二年生のエピファーノフが、ナイフと一ルーブリ銀貨ぎんかをなくしたのである。このあかいほっぺたをしたふとっちょの子供は、盗難とうなんに気がつくと、わっと泣声なきごえをあげた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
畜生ちくしょう! け! さッさとけ!』とかれ玄関げんかんまで駈出かけだして、泣声なきごえげて怒鳴どなる。『畜生ちくしょう!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
談話だんわ次手ついでに松川が塾の荒涼たるをかこちしより、予は前日藪をけんせし一切いつさいを物語らむと、「実は……」とわづか言懸いひかけける、まさに其時、啾々しう/\たる女の泣声なきごえ、針の穴をも通らむず糸より細く聞えにき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爺さんは泣声なきごえして
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)