“気付(きづ)” の例文
旧字:氣付
どやしつけられた、背中(せなか)の痛(いた)さもけろりと忘(わす)れて、伝吉(でんきち)は、元結(もとゆい)が輪(わ)から抜(ぬ)けて足元(あしもと)へ散(ち)らばったのさえ気付(きづ)かずに夢中(むちゅう)で長兵衛(ちょうべえ)の方(ほう)へ膝(ひざ)をすり寄(よ)せた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
宿泊帳には故意(わざ)と偽名を書(しよ)したれば、片岡(かたをか)氏(し)も妾(せふ)をば景山英(かげやまひで)とは気付(きづ)かざりしならん。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
子犬の生れた騒ぎに、猫のミイやが居ないことを午過(ひるす)ぎまで気付(きづ)かなかった。「おや、ミイは?」と細君(さいくん)が不安な顔をして見廻(みま)わした時は、午後の一時近かった。総(そう)がかりで家中探がす。居ない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
陽(ひ)は高々(たかだか)と昇(のぼ)っているらしく、今(いま)さら気付(きづ)いた雨戸(あまど)の隙間(すきま)には、なだらかな日(ひ)の光(ひかり)が、吹矢(ふきや)で吹(ふ)き込(こ)んだように、こまいの現(あらわ)れた壁(かべ)の裾(すそ)へ流(なが)れ込(こ)んでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)