-
トップ
>
-
此花
>
-
このはな
足
一度静岡の地を踏んで、それを知らない者のない、
浅間の森の
咲耶姫に対した、草深の
此花や、
実にこそ、と
頷かるる。河野一族随一の
艶。
「
此花は
何うしたんです。
買て
来たんですか」と
聞いた。三千代は
黙つて
首肯いた。さうして
二階の
襖に半紙四ツ切程の大きさに複刻した浮世絵の美人画が
張交にしてある。その中には歌麻呂の
鮑取り、
豊信の入浴美女など、
曾てわたくしが雑誌
此花の
挿絵で見覚えているものもあった。
皆此花より
生れ
出でて、
立去りあへず、
舞ひありく、
人の
蝶とも
謂ひつべう。
「
貴方、
此花、
御嫌なの?」