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このはな
二階の
襖に半紙四ツ切程の大きさに複刻した浮世絵の美人画が
張交にしてある。その中には歌麻呂の
鮑取り、
豊信の入浴美女など、
曾てわたくしが雑誌
此花の
挿絵で見覚えているものもあった。
皆此花より
生れ
出でて、
立去りあへず、
舞ひありく、
人の
蝶とも
謂ひつべう。
たしか
左樣と
知つて
居りまするけれど
今は
少しも
恨む
事をいたしません、なるほど
此話しを
聞かして
下さらぬが
旦那樣の
價値で
姉樣たちの
御存じはなき
事なり、もう
此話しは
廢しまするほどに、
何ぞお
前樣が
今日あそびて、
面白く
思ひしお
話しがあらば
聞かして
下され、
今日は
吾助がどの
樣なお
話しをいたしました。