横仆よこた)” の例文
こうして合戦が長びくにつれて国内の飢餓うえは日一日と、益〻暴威をたくましゅうし、とうとう町々辻々に餓莩がひょう横仆よこたわる有様となった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
範覚のやった所業しわざなのであろう、両手両膝をしばられて、猿轡さるぐつわまでかまされた浮藻の姿が、痛々しくその奥に横仆よこたわっていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小丘を上り、小丘を下りると、周囲を林に取り巻かれた広い空地が横仆よこたわっていたが、そこに数にして二十軒あまりの、板壁造作づくりの小家があった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし益々風雨は募り、全くシケの光景となり、漕いでも無駄と知った時、紫錦は舟底へ身を横仆よこたえた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
葛葉くずはの二関の他は、関所ことごとく開放し、商売往来のついえをはぶき、また元亨元年の夏、大旱だいかんあって地を枯らし、甸服でんぷくの外百里の間、赤土せきどのみあって青苗せいびょうなく、餓莩がひょう巷に横仆よこたわり
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこに谿たに横仆よこたわっていた。そうして谿底へ下りた時、彼は最初の休憩やすみをとった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(口調ある朗吟的の言葉にて)女よ、窓を通して音楽堂を見ろ! 青い燈火がいている。お前のために恋を歌った、深山鈴蘭の送り主が、青い燈火の光の裏に、恋の屍を横仆よこたえている。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
立ち止まって四辺あたりを見廻わした。冬ざれた半農半漁の村が、一筋寂しく横仆よこたわっている。それを越すと耕地である。耕地の向こうが大森林で、檜や杉の喬木が、澄み切った空を摩している。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
諸所に丘があり、川があり、奇岩怪石が横仆よこたわり、こけが一面に生えている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
四方あたりが宵のように薄暗い、灌木や蔓草が茂っている。それが歩く足をさらおうとする。巨大なたおれ木が横仆よこたわり、それがやっぱり足を止める。丘のような大岩が転がっている。所々に古池がある。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
気絶したまま可哀そうな浜路、三人の眼の前に横仆よこたわっている。乱れた髪の毛、蒼褪めた顔、崩れた衣裳、露出した肌、その肉体の豊麗さ! 秀麗な御岳の山霊に、はぐくまれて出来た女神である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女は姫の寝室のかもの掛かった寝台の上に、疲労つかれた体を横仆よこたえていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「乞食よ、安心せ、大塔宮様は、村上義光殿お身代わりになり、御自身おんみずからにはこの道より、高野へお落ち遊ばされたわ。……そちの足もとに死骸むくろとなって、横仆よこたわっている若武者こそ、義光殿のご子息義隆殿じゃ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
病床に横仆よこたわる宗三郎
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)