楽人がくじん)” の例文
旧字:樂人
紅衣こうい楽人がくじんたちがふえをはやし、白丁狩衣はくちょうかりぎぬの男たちがほこや榊をふって、歌いに歌う。そしてになった女子供が花棒はなぼうふりふりおどって歩く。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから彼は突然ポッケットへ手を入れて、白い紙片かみきれと万年筆を取り出した。彼はすぐそれへ何か書き始めた。正面の舞台にはもう楽人がくじんが現われた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただし満洲の蛙もことごとくこの調子外ればかりではなかった。中には楽人がくじんの資格を備えている種類もあった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
田植時たうえどきも近いので、の田も生温なまぬるい水満々とたたえ、短冊形たんざくがたの苗代は緑の嫩葉わかば勢揃せいぞろい美しく、一寸其上にころげて見たい様だ。どろ楽人がくじん蛙の歌が両耳にあふれる。甲州街道を北へ突切つっきって行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
建康けんこうに二人の楽人がくじんがありまして、日が暮れてから町へ出ますと、二人のしもべらしい男に逢いました。
こうして、何番勝負かののち、酒餐しゅさんをたまい、伎女ぎじょ楽人がくじんの舞があって、一せいに、唱歌しおうて、秋ならば、菊、桔梗ききょうなどの一枝ひとえ一枝ひとえ家土産いえづとに、終日ひねもすかんをつくして終わるのであった。
駕輿丁かよちょう雑人ぞうにんをつれていたわけでもないので、そのおん輿こしは、大膳ノ大夫重康しげやす楽人がくじんの豊原兼秋、随身の秦久武はたひさたけなどが、馴れぬ肩に、きまいらせたとのことであるから、途上の難行苦行のていも
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)