楚歌そか)” の例文
君は何故なぜっていうのですか。何故ってね。僕は、このごろ四面楚歌そかさ。貧乏になったのも知ってるでしょう。何にも目ぼしい作書いてないものね。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
四面楚歌そかのドイツのスパイだから、たちまち闇黒やみの中で処分されてしまうという段取りで、一度密偵団の上長じょうちょう白眼にらまれたが最後、どこにいても危険は同じことだ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
引き続き四面楚歌そかの庸三は、若い愛人を失った年寄同志のうえに、何か悪いデマが飛びそうなので、いつも礼儀を正しく警戒したが、その晩も猪口ちょくを口にする気にもならず
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いまはもう四めん楚歌そかだ。絶望ぜつぼうの胸をいだいて、立ちすくんでしまうよりほかなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楚歌そか一身にあつまりて集合せる腕力の次第に迫るにも関わらず眉宇びう一点の懸念なく、いと晴々しき面色おももちにて、渠は春昼せきたる時、無聊むりょうに堪えざるもののごとく、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田舎いなか丸出しの女中たちのこしらえてくれる食膳しょくぜんに向かうことも憂鬱ゆううつだったが、出癖もついていたせいで、独りで書斎にいると、四面楚歌そかのなかで生きている張り合いもないような気もした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
楚歌そか一身にあつまりて集合せる腕力の次第に迫るにもかかはらず眉宇びう一点の懸念けねんなく、いと晴々はればれしき面色おももちにて、かれ春昼しゅんちゅうせきたる時、無聊むりょうえざるものの如く、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おそらく、その彼らまでが、離反の仲間に加わり、ここの行在所へ向って、遠くから鬱憤を言いたけッているものにちがいない。まるで、野獣の吠えるあらしだ。これこそ四めん楚歌そかというものだろう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めん楚歌そか弥次やじごえも馬の耳に念仏ねんぶつ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)