桐壺きりつぼ)” の例文
はじめて桐壺きりつぼ更衣こういの上がって来たころのことなどまでがお心の表面に浮かび上がってきてはいっそう暗い悲しみに帝をお誘いした。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「お帳場さん、桐壺きりつぼのお客が、ちょっと、お前さんに顔を貸してもらいたいって。——ほかのお客はもうお帰りだから、すぐ行っておくれ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはとにかく、元素の名前に「桐壺きりつぼ」「箒木ははきぎ」などというのをつけてひとりで喜んでいる変わった男も若干はあってもおもしろいではないかと思うことがある。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
兵部卿ひょうぶきょうの宮は時が時であったから苦しくお思いになって、桐壺きりつぼ宿直とのい所へおいでになり、手紙を書いて宇治へお送りになったあとも
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
桐壺きりつぼきゃく
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寝殿の東側になった座敷には桐壺きりつぼかたがいたのであるが、若宮をお伴いして東宮へ参ったあとで、そこはき間になっていて静かだった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
女という者は皆桐壺きりつぼ更衣こういになろうとすべきだ。私が地方に土着した田舎者だといっても、その古い縁故でお近づきは許してくださるだろう
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏の桐壺きりつぼには女房がおおぜいいたから、主人が暁に帰った音に目をさました女もあるが、忍び歩きに好意を持たないで
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大臣家ではこうして途絶えの多い婿君を恨めしくは思っていたが、やはり衣服その他贅沢ぜいたくを尽くした新調品を御所の桐壺きりつぼへ運ぶのにむことを知らなんだ。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏の母君の桐壺きりつぼ御息所みやすどころの兄君の律師りっしがいる寺へ行って、経を読んだり、仏勤めもしようとして、二、三日こもっているうちに身にしむことが多かった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
若い女房たちが何人もいる気配けはいがそこにして皆月夜の庭の景色けしきを見ていた。そうであったあの人も浮舟らと同じ桐壺きりつぼみかどの御孫であったと薫は思い出して
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
東宮へ上がっておいでになる桐壺きりつぼの方は退出を長く東宮がお許しにならぬので、姫君時代の自由が恋しく思われる若い心にはこれを苦しくばかり思うのであった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
桐壺きりつぼの方などを御覧になって、それぞれ異なった美貌びぼうに目を楽しませておいでになったあとで、始終見れておいでになる夫人の美から受ける刺激は弱いはずで
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏のほうは昔の宿直所とのいどころ桐壺きりつぼの室内装飾などを直させることなどで時日が延びているのを、東宮は待ち遠しく思召す御様子であったから、四月に参ることに定めた。
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
桐壺きりつぼ更衣こういのお生みした光源氏の君が勅勘で須磨に来ていられるのだ。私の娘の運命についてある暗示を受けているのだから、どうかしてこの機会に源氏の君に娘を差し上げたいと思う」
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏の現在の宿直所とのいどころもやはり昔の桐壺きりつぼであって、梨壺なしつぼに東宮は住んでおいでになるのであったから、御近所であるために源氏はその御殿とお親しくして、自然東宮の御後見もするようになった。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そして東宮の御息所みやすどころ桐壺きりつぼ曹司ぞうしで二夫人ははじめて面会したのである。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
はなやかな空気が桐壺きりつぼに作られて、芸術的なにおいをこの曹司でぎうることを喜んで、殿上役人などもおもしろい遊び場と思い、ここのすぐれた女房を恋の対象にしてよく来るようになった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
桐壺きりつぼで泊まるふうを見せながら夜がふけてから末摘花の所へ来た。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
住んでいる御殿ごてんは御所の中の東北のすみのような桐壺きりつぼであった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
呼ばれない時でも大輔はそうした心安さからよく桐壺きりつぼへ来た。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)