有難涙ありがたなみだ)” の例文
五月いつゝきになるお照の身重の腹を、重二郎に持って居ります扇でそっと突かれた時は、はッとお照は有難涙ありがたなみだに思わず声が出て泣伏しました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伯父々々をぢ/\よぶべしと言ければ兩人は有難涙ありがたなみだくれあつ御禮おんれい申上召連し見知人甚左衞門善助は名主部屋へ入置休息きうそく致させける是に依て越前守には池田大助だいすけに命じ全快屆ぜんくわいとゞけの書面を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見も知らぬ浮浪人を、快く家に通すさえあるに、その技倆を信じて、おのが道場を任せて疑わぬ丹後守の度量には、机竜之助ほどのねじけた男も、そぞろ有難涙ありがたなみだに暮れるのであります。
百両の金が何でるか知らぬがあれ程の悌順やさしい女を金にかえらるゝ者と思うて居る貴様の心がさもしい、珠運という御客様の仁情なさけ半分汲めたならそんな事わずに有難涙ありがたなみだむせびそうな者。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こらえるのみにあらず主とも師匠とも頼む少女の激励げきれいに対する有難涙ありがたなみだこもっていたゆえにどんな痛い目にってもげはしなかった泣きながら最後まで忍耐にんたいし「よし」と云われるまで練習した。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう、マリアさまのようなあなたさまに、たとえ一日でも二日でも、お預りを願うというのも、ひとえに日ごろの信心のお蔭だと有難涙ありがたなみだにくれる次第でございまス。では、お休みなさいませ。
と熊のつむりを撫でて暫く有難涙ありがたなみだにくれて居りますると、熊も聞分けてか、悄然しょうぜんしおれ返って居りまする。お町は涙を払いながら
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
侍「なに有難涙ありがたなみだを」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)