月末つきずえ)” の例文
永「何うしたって、それは知れる、忘れもしない十三年あと、九月の月末つきずえからお前の処へわしも足を近く通った、私は水司又市だが忘れたかえ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
月末つきずえに三の輪の新世界で巴会の例会があった。祖父は顔出しはしなかったが、私のために心配して、烏帽子籠えぼしかごに入れた長命寺の桜餅を来会者に配った。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
で、親子一つ事を反覆くりかえすばかりで何日っても話の纏まらぬうちに、同窓の何某なにがしはもう二三日ぜんに上京したし、何某なにがしは此月末つきずえに上京するという話も聞く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「はい、はい、どうせ無代価ただで頂戴いたしますものでございます。めのさんのお魚は、現金にも月末つきずえにも、ついぞ、お代をお取り遊ばしたことはございません。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄妹きょうだいの間に「あの事」として通用する事件は、なるべく聴くまいと用心しても、月末つきずえの仕払や病院の入費の出所でどころに多大の利害を感じない訳に行かなかった津田は
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その月末つきずえに、半七は三田の方角へ行ったついでに高輪の伊豆屋へ久し振りでたずねると、焼けた家は新らしく建て直ったが、主人の弥平は風邪がもとで寝込んでいた。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
月末つきずえなるべしと青年は答え、さればこの地もまたいつ帰り来て見んことの定め難く、また再び見ることかなうまじきやこれまた計り難ければ、今日は半日このあたりを歩みて一年と五月いつつきの間
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
是からもう月末つきずえになって、度々たび/\雪が降りますると道も止りますが、まア/\今年は雪が少ないので仕合せでござります、さぞ日々御退屈でございましょう
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして月末つきずえが来ても会計簿はついに健三の手に渡らなかった。健三も機嫌のい時はそれを黙認した。けれども悪い時は意地になってわざと見せろとせまる事があった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五銭十銭と取りに来る……月末つきずえの工賃はね、嫁入支度に預るいうて洗いざらい持って行って、——さあ、いやでも応でも今の亭主へるというと、それこそ、ほんに、抱えるほどな
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とこれから山之助は気が勇んで、思ったより早く病気が全快致しましたからまだ雪も解けぬうちを、到頭出立致し、おい/\旅を重ねまして、翌年二月の月末つきずえに紀州へ参りました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あの時は月末つきずえに廿八円払いました」
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この二月月末つきずえ、本所北割下水大伴蟠龍軒と云う剣術遣いの先生の舎弟の蟠作と云うものが店へ来て、あつらえ物があるから宅へ来いと云われるから、度々たび/\参りますと、結構な品々を買ってくれ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)