にはか)” の例文
九月ながつき下旬すゑつかた、けふはことに二一なごりなくぎたる海の、にはか二二東南たつみの雲をおこして、小雨こさめそぼふり来る。
去月二十九日上関に薩の蝶丸にて参りたり。然るに此度の用事は云々、先づ京師のヨフス様子は去月十五日将軍上洛、二十一日、一橋会津桑名にはかに朝廷にせまり、追討の命をコフ。
貫一は不断にこのことばいましめられ、隆三は会ふ毎にまたこの言をかこたれしなり。彼はものいいとまだに無くてにはか歿みまかりけれども、その前常に口にせしところは明かに彼の遺言なるべきのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
忽ちにして蜑煙たんえん蠻雨ばんうの荒郷に身を投ずるとか、貧人のにはかに富むとか、貴人の忽ちに簪纓しんえいを抛つとか、寡婦の夫を得るとか、桀黠けつかつの士の亂の起るに會ふとか、凡そ是の如き境遇際會の變易よりして
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
都のものにてもあらず、此の近き所に年来としごろ住みこしはべるが、けふなんよき日とて五四那智なちまうで侍るを、にはかなる雨の恐ろしさに、やどらせ給ふともしらで、五五わりなくも立ちよりて侍る。