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春重
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はるしげ
背伸びをして、三
尺の
戸棚の
奥を
探っていた
春重は、
闇の
中から
重い
声でこういいながら、もう一
度、ごとりと
鼠のように
音を
立てた。
痩た
松五
郎の
眼が
再び
春重の
顔に
戻った
時、
春重はおもむろに、ふところから
何物かを
取出して
松五
郎の
鼻の
先にひけらかした。
一つずつ
数えたら、
爪の
数は、百
個近くもあるであろう。
春重は、もう一
度糠袋を
握りしめて、
薄気味悪くにやりと
笑った。